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エムズコミュニケイト 佐藤 信二
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こんにちは。CRM/ポイントサービスコンサルティングのエムズコミュニケイト(2018年4月に大日本印刷グループよりMBO致しました)が運営するポイントマーケティングラボ編集部です。
こちらのサイト、ポイントマーケティングラボでは、企業・事業会社のマーケティング・販売促進の担当者・事業責任者の方々に向けて、ポイント制度の導入やCRMのノウハウについて、プロの視点から惜しみなく情報を発信して参ります。
是非ご参考にしていただければ幸いです。
顧客を守り、増やし、維持することは、マーケティングの最重要課題です。
顧客の維持とは、常に新しい顧客が生まれ続け、その顧客が長期にわたって自社製品やサービスを継続して利用することです。つまり、新規顧客の獲得と既存顧客維持が両立できている状態が理想です。
しかし、既存顧客の維持は、新規顧客の獲得ほど重点を置いていないケースが多いのではないでしょうか?
今回は、既存顧客維持の重要性に着目し、既存顧客の魅力をお伝えしようと思います。
顧客維持における既存顧客の重要性
【日本のマーケティング市場の現状】
基本的にマーケティングでの新商品開発は、「新規顧客の獲得」を前提にしています。昔は様々な消費者ニーズが顕在化し、失う顧客以上の新規顧客獲得が可能でした。
しかし、現在消費者ニーズは潜在化し、競合他社が増え、ニーズも大量で長期的なものは望めなくなってきています。そして日本のほとんどの業界がもはや成長期を過ぎ、成熟が進んでしまっています。
競合商品が多くあり、どの商品の情報もインターネットなどで簡単に知ることができるようになった今、顧客が他社商品に乗り換えることも非常に簡単です。
今は購入頻度の高い顧客でも、他社商品に興味が移りやすくなっているのです。
既存顧客の維持=既存顧客を守る=損失を減らす
このような状況では、新規顧客獲得の量よりも失う顧客の量の方が多くなるのは想像ができます。企業が最も恐れる、『顧客を失う』環境が整っているのです。
新しい顧客が次々と増え、業界全体が成長していくことは期待できない今、自社が成長していくには、競合から顧客を守り、奪い、自社のシェアを維持拡大していく以外にないのです。
たとえば、会員10,000人の企業が、顧客獲得一人あたりの支払額¥20,000で獲得した会員を年間10%失ったとしたら、¥20,000×1,000=20,000,000のコストが水の泡に帰したということになります。しかも、本来その後も取引が継続できたはずの顧客です。
本来得ることができたはずの収益もなくなるわけですから、先の無駄になったコストに加え本当の損失は計り知れません。数字にすると、既存顧客を失う怖さがより明確になりますね。
既存顧客を失う怖さと、既存顧客を維持する重要性がお分かりになるかと思います。
既存顧客を維持する意味はなにか
「企業の全収益の80%は20%のヘビーユーザーによって得られている」というデータがあります。これは20対80の法則とか、パレートの原理と呼ばれ、知っている人も多いと思います。このデータからも、いかに既存顧客によって多くの収益が得られているかがよく理解できます。
売上を上げる2つの方法
売上を上げるのには二つの方法があります。
- 新規顧客を獲得し、顧客数を増やす
- 既存顧客の単価、購買頻度を上げる
しかし、新規顧客獲得には大きなコストがかかります。
新商品開発、広告宣伝費など新規顧客獲得にかかるコストは、同程度の売り上げが見込める既存顧客維持のコストに比べると、4~5倍もかかるというのが一般的な目安です。
もう一つの方法は、購買頻度を高め、顧客単価を上げることで、全体の顧客数はそのままに、売り上げ、収益を上げるやり方です。顧客離れを起こさせない仕組みを考え、既存顧客維持に努めることで、収益性を高めてマーケティングコストを賢く使うことができます。
以下の記事では顧客位にの方法や戦略について、より詳しくご紹介しています!本記事と併せてぜひご覧ください!!
顧客維持は何のために必要なのか?
既存顧客維持の重要性について考えてみましたが、顧客維持の必要性についても、企業と顧客との関係性に紐付けて考えてみましょう。
新規顧客獲得よりもコストパフォーマンスが良いという事以外に、企業にとってメリットや、必要といえる要素は何なのでしょうか?
ポイントは2つあるでしょう。
1つは、「新規顧客を呼んでくる」で、2つめは「企業の価値を高める」です。
ポイント① 「顧客維持は新規顧客を呼んでくる」
まずは、1つめから見ていきましょう。
顧客維持はなぜ新規の顧客を呼び込んでくるのでしょうか?
そもそも企業が顧客維持をするために行う施策は、一過性のその場しのぎのものでは、長続きしません。長く顧客で居続けてもらうためには、企業が本当に顧客に支持されていなければなりません。
そのために企業はSNSなどで繋がりを持ったり、サービスや商品を理解してもらうように努めます。そうして企業と既存顧客との間に信頼関係を築くことによって、初めて顧客は「ファン」になってくれるのです。
ファンは、口コミによって自然と他の顧客を紹介してくれることがあります。
その口コミ効果というのは絶大といわれており、特に家族や友人などの心理的距離が近い人であればあるほど信用度は高まり、一般的な新規顧客よりも優良なターゲット層となります。
ただ、こういった形の新規顧客は、最初の期待値が非常に高いので、その期待を裏切らないようにする必要もあります。
期待はずれのサービスが提供されればその顧客を失うだけではなく、紹介してくれたファンの信用まで裏切ってしまうことにもなりかねないからです。
ポイント② 「顧客維持は企業の価値を高める」
さて、2つめに挙げた、既存顧客維持は「企業の価値を高める」といったことは、どういったことでしょうか?
前述でも、顧客維持するために短絡的な施策ではなく、中長期な関係を見据えたしっかりと施策が必要だということは言ってきました。
たとえば、顧客が自社の商品を手に取ったときに「どういったことを感じて、どのように行動するか」といったことを具体的かつ詳細まで考えているでしょうか?
- 「顧客はこう考えるに違いない!」
- 「これを食べたら美味しいと感じるはず!」
など、企業側の都合の良いような解釈をしていないでしょうか?
顧客の本当の姿というのは、簡単なお客様アンケートをしても出てきません。実際に顧客の立場に立ってみるのが大事でしょう。競合他社に顧客としてサービスを受けてみて、どう思ったか考えてみるのも良いかもしれません。
こういった、顧客がいかに満足してサービスを利用してくれるか試行錯誤することは、結果的に企業の価値を高めることに繋がるでしょう。企業に対する顧客という関係性であっても、所詮「人のつながり」ですので、誰かが自分のために頑張って尽くしてくれることに悪い気持ちになる人はいないでしょう。
既存顧客維持の方法
既存顧客を維持していくことの重要性について上の内容で見ました。顧客維持の方法は、端的に言えば顧客満足度を高めることです。顧客は企業の提供する商品やサービスに満足度を上げなければ、当然ながら離脱していきます。
では、その顧客満足度を上げるにはどうしたら良いのでしょう?
【既存顧客維持の方法】ユーザー視線になる
継続して利用してもらっているからと言って顧客が本当に思っていることを認識しているでしょうか?
極端ではありますが、コンビニなどを例に考えてみましょう。
商品数が少ない、店の雰囲気があまり良くない、などと感じていながらも繰り返し利用しているといった経験はないでしょうか?そしてこのように感じていても、なかなか企業側や店員に伝える機会もないのではないでしょうか。
このように、普段何気なく思っている事であっても、提供する側になると見落としてしまうというのは案外多くあります。そのため、繰り返し利用してもらっているからこそ、提供する側がユーザーの目線になることも既存顧客維持の一つの方法です。
では、顧客視点のサービスをおこなうにはどうしたら良いのでしょうか?
- 顧客アンケートをおこなう
例えば、会計時に簡単な顧客アンケートをおこなったり、通常の接客時にコミュニケーションを図ることで意見を聞くのも方法の一つでしょう。 - 顧客の「事前期待」について考慮する
顧客は、その店舗にどんなことを期待して来店するのでしょうか?顧客は「期待していたものとは何か違った」と思えば、簡単に離脱します。そのため、自社店舗に何を求めているか探る必要があるでしょう。一般的に「事前期待」とは4つあると言われています。
- 共通的な事前期待
来店する全ての顧客が共通的に期待をしている、これは至極当たり前のことです。レストランなら「美味しい」「価格が適正」などがこれに当たります。最低限の「期待」と言っても良いかもしれません。 - 個別的な事前期待
顧客ひとりひとりで異なる期待です。旅館などに宿泊したときに「まくらは固めがいいなぁ」や、飲食店であれば「アルコールが飲めないからソフトドリンクが充実していてほしいなぁ」などのそれぞれの好みによって変化する期待です。
基本的に個々で異なるので、サービス提供側は期待に応えるのが非常に難しい項目になってきます。顧客個々に目を向けない限り、かなえることの難しい期待です。だからこそ、顧客データベースなどのCRMシステムなどを活用するのも一つの手になってきます。 - 状況で変化する事前期待
再来店した顧客であっても、その顧客状況によってはいつもと違う事前期待を持っているという、イレギュラーな期待もあります。
いつもは冷やし中華が好きな顧客でも、寒くなってくればあったかいメニューを食べたくなります。おすすめするメニューを、体が温まるものを薦めたり、顧客の状態を見て臨機応変に対応する柔軟性が必要になるでしょう。 - 潜在的な事前期待
予想外のサービスを受けて感動したという経験の元になる稀な「期待」と言って良いでしょう。そして顧客側もこれを実現されることは少ないでしょう。実はディズニーでこんなことがあったそうです。
とある夫婦がレストランに来店し、子供を連れていないのにも関わらず「お子様ランチ」を頼みました。大人だけの席にその注文は受けることは出来ないと答えたら、何か訳があったそうで事情をそっと聞いてみたそうです。そうすると、「去年お腹にいた子供がお誕生日を迎えることなくなくなってしまったけど、ずっとここのお子様ランチを食べようって約束していたんです」と言うのです。接客したキャストは、家族で座れる広い席に案内しなおし、お子様椅子を用意し、そしてお子様ランチを用意し、「ご家族でごゆっくりお過ごしください」と言ったそうです。
これは一例ですが、このように感動せずにはいられない経験があれば、顧客は記憶に残り、感動してくれるでしょう。
【既存顧客維持の方法】顧客からの情報に真摯に向き合う
顧客から得られた情報などは、私たちが考えている以上に様々な意見などが寄せられることとなります。これらの意見を集めることで、マイナスな側面側が見えてくる一方でプラス意見などもこの際に分かってきます。これは企業にとってとても貴重で生かしていくべき情報となります。
しかし、この時得られた顧客の意見すべてに対して完璧に答えられるわけではない、というのも事実でしょう。
しかしニーズに応えられる努力をすることで、企業のイメージが上がることは多くありますし、そうして顧客の満足度を高めていくことが、何よりもの既存顧客維持の方法です。
顧客維持の問題:コスト
次に、顧客維持にかかるコストについて考えてみましょう。
顧客維持の手法としてはいくつか考えられ、どの手法を使うかによって当然コストも変わってきます。また、業界や商品や対象となる顧客層によっても、変動があるので、ここでは参考程度にご覧ください。
ポイント:コストをかける場所を絞る
顧客を維持する(=逃さない)ためには、顧客が「顧客で在り続けること」に何かしらのメリットを感じてもらうことが重要です。
そのために有効な手段の一つは、ロイヤルティプログラムでしょう。
これは、優良顧客に特別感を提供し、特典や限定商品、イベントなどを通じて価値を提供するものです。
ロイヤルティプログラムの代表例としてあげられるのは、ポイントサービスを活用する場合です。また、優良客だけが買える限定商品を用意したり、イベントを企画し開催するといった手法もあります。
こういった『特別措置』の中で注意するべきは、簡単に「何%OFF」といった値引きを行わないことです。一度値引きしてしまった商品は元の値段に戻すのは非常に難しいからです。
たとえば、「特別な体験」を顧客にプレゼントするのはどうでしょうか?
とある家具店では、「最新ベッドでお昼寝が出来て、ジュースも飲める」という体験をプレゼントしたようです。これであれば、ドリンク代と人件費、替えのシーツ代くらいでコストはたかがしれています。
顧客への還元は、コストを掛ければ掛けるほど良いわけではなく、いかに顧客が喜ぶことを察知し、それを企画し、仕掛けられるかに掛かっているのです。
また、以下の記事ではロイヤリティプログラムについてより詳しく解説しています!本記事と併せてぜひご覧ください!
顧客維持率とは?計算方法は?
ところで、顧客維持率という数値を知っているでしょうか?これはそもそも何なのか解説していきたいと思います。
「顧客維持率」というのは、顧客が「顧客で居続けている割合」のことを指します。たとえば、通販会社であれば、会員登録をして初回購入後その後も定期的に商品を購入しているかどうか、いったところです。
この顧客維持率というのは、重要な数値と言われています。というのも、統計では、顧客維持率が高い企業ほど、企業の利益は高いといわれています。
計算方法は次のようになっています。
顧客維持率 = 期間終了まで残った顧客数 ÷ 期間開始時の顧客数
この期間というのは、企業が求めた時期や目的などで異なります。ある一定期間で区切って、数値を観察していくのが良いでしょう。一般的には、年間の顧客離脱率は10~30%と言われているので、顧客維持率は70~90%が大半と言えそうです。
そして、この数値を算出するにはCRMなどの顧客管理システムを活用するのが適しており、顧客データを分析する要素の一つにこの項目を入れて、自社の顧客維持率の現状を把握することが重要です。
顧客維持の戦略・事例
顧客維持(カスタマーリテンション)はどの企業も苦労している点で、なかなか上手くいかない場合もあるかもしれません。
顧客維持を改善したいと思っている場合、どういった新たな施策があるか考えてみたいと思います。
①SNSの活用
SNSはクレームだけでなく、顧客の意見を収集する有効な手段です。
口コミやつぶやきにはリアルな要望が隠れていることがあり、コールセンターに届かない声もあるからです。
SNSの活用は顧客満足度を向上させるとともに、不必要な顧客の離反を防ぐ効果もあります。例えば、自動車メーカーがSNS上のデマに迅速に対応し、信頼関係を維持した事例もあります。
②プッシュ通知機能
顧客のネットショッピングやスマホ利用が増える中で、アプリのプッシュ通知を活用する施策が注目されています。
しかし、適切に活用すれば顧客維持に役立ちますが、多すぎると逆効果になる可能性があります。そこでCRMシステムを使って、通知対象や頻度を管理することで、特定の顧客に対して有効な情報を送ることができます。
たとえば、商品サイトを一度だけ見て離脱してしまい購入に至らなかった顧客に一度だけ特別セール情報を通知する、なども有効かもしれません。
下記サイトのように、大手通販サイト「楽天」も、大々的に通知機能を活用しています。このように、通知機能をうまく活用できれば顧客を守ることにつなげられるのです。
https://event.rakuten.co.jp/notification/
まとめ〜既存顧客維持が重要な理由とその方法
既存顧客がもたらす収益は、企業の重要な収入源であることは明白です。同時に、既存顧客を失った時の怖さも、同じく明白ですね。企業は既存顧客維持のために継続的に顧客を知る努力をし、新規顧客獲得と同様に、既存顧客を維持していくための労力を惜しまないことが重要です。
下記の記事では「失敗しないリテンション施策の事例」をご紹介しています。さらに詳しく既存顧客維持に関する事例をまとめていますので、本記事と併せて是非ご覧ください!
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ポイントサービスの運用に必要な法的(景品表示法)、会計面(2021年から上場企業に強制適用されるポイント会計)において十全なノウハウを保有しサポートします。
※ポイント会計についてはEY新日本監査法人への執筆協力で『ポイント制度のしくみと会計・税務』(中央経済社)を出版。
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