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エムズコミュニケイト 佐藤 信二
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こんにちは。CRM/ポイントサービスコンサルティングのエムズコミュニケイト(2018年4月に大日本印刷グループよりMBO致しました)が運営するポイントマーケティングラボ編集部です。
こちらのサイト、ポイントマーケティングラボでは、企業・事業会社のマーケティング・販売促進の担当者・事業責任者の方々に向けて、ポイント制度の導入やCRMのノウハウについて、プロの視点から惜しみなく情報を発信して参ります。
是非ご参考にしていただければ幸いです。
それでは、以下から本題です。
自社発行のクレジットカードである「ハウスカード」について、そのメリットや導入事例はご存じですか?
昨今ハウスカードの発行枚数は減少しているといわれていますが、実はハウスカードならではのメリットも沢山あります!
発行枚数が少なくなっているという側面だけを理由に、自社のマーケティング施策の選択肢から排除してしまうのは、とてももったいないことかもしれません。
本記事では、自社発行のクレジットカード「ハウスカード」をテーマに、その導入のメリット・デメリットや昨今の動向、事例について、詳しくご紹介していきます!!
<この記事は、以下の課題を感じている方に特にオススメです!>
- ハウスカードとは、何かを知りたい!
- ハウスカードを自社に導入するか検討中…
- ハウスカードの導入にあたって、メリット・デメリットを確認したい‼
ハウスカードの基礎知識
ハウスカードとは?
ハウスカードとは、企業独自に発行しているクレジットカードのことです。発行元企業とその系列企業においてのみ使用可能なクレジットカードと言い換えることもできます。
ハウスカードは、ある限られている範囲の利用で、利用金額にも限度があるため、使用も限定的になります。VISAやMasterCardなどの国際ブランドと提携しているクレジットカードに比べ、汎用性が少ないカードといえます。
ハウスカードを具体的に例えると、「A店というお店が独自に発行しているクレジットカード」のことで、「そのA店の系列のグループ内でしか利用できないクレジットカード」ということになります。
運用方法
自社でクレジットカードを発行するとなると、いったいどのような作業が必要になるのか、不安に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
一般的な運用方法としては、企業が運用に関するすべての実務を行っているわけではなく、協力してくれるカード会社に実際の実務を委託しています。
活用されている業種・業態
では、ハウスカードはどのような業種・業態で活用されているのでしょうか?
一般的には、グループ化した大きな小売店での利用が多い状況です。特に以下のような業種でのカード発行が多いといわれています。
- 百貨店
- スーパー
- 専門店
- 鉄道
- 石油チェーン
ハウスカードを運用する目的
上記のいずれの業種・業態においても、ハウスカードに求められる目的は、顧客の囲い込みや取引拡大です。
信販会社の発行する自社独自のクレジットカードも、このハウスカードに準じると捉えられます。
しかし最近では、企業の事情や総合的なメリットを考慮し、VISAなどの国際ブランドと提携したクレジットカードに切り替える傾向が強まってきています。汎用カードと呼ばれ、一般的なハウスカードと分けられています。
ハウスカードの最近の動向
昨今、ハウスカードはその発行部数や発行企業数が減少しています。「限られた店舗でしか利用できない」という消費者目線での利便性の低さがその理由です。
ハウスカードは、クレジットカードのように加盟店手数料がかからないなど、企業側には大きなメリットがありますが、消費者にとってメリットが少なく感じられる結果として、発行部数も発行している企業の数も減ってきているのです。
代わりに、ハウスカードにVISA、MasterCard、JCBといった国際ブランドが付帯されたクレジットカードが増加しています。国際ブランドと提携しているクレジットカードであれば、国内外を問わず、あらゆる店舗で利用できるため、消費者としては従来のハウスカードよりも利便性が上がるのです。
では、このような昨今の動向の中で、ハウスカードを設ける意味はなくなっているのでしょうか?
次の章では、そもそもハウスカードのメリットはどのようなものなのか、ハウスカード独自のメリットについて改めて確認していきましょう!
ハウスカード導入のメリットとは
結論から申し上げると、ハウスカードにはハウスカードだからこそ実現できるメリットがあります。企業運営やブランディング、顧客のターゲット層を自社にとって最適に選定するなど、会社独自の方針を決めることで、ハウスカードだからこそ実現可能な「顧客と向き合い方」を確立できます。それこそがハウスカードの魅力なのです。
ではハウスカード導入のメリットについて、提携型のカードと比較したときのメリットを見ていきましょう!!
1. 顧客情報の取得と活用
ハウスカードの発行と、それを使って顧客が買い物をすることを通じて、企業は顧客情報と顧客の購買履歴を入手することができます。
一方、クレジットカードの場合は、顧客の情報はクレジットカードの発行元であるカード会社の管理になるため、加盟店側の企業には入ってきません。
しかし、年齢、性別、住所、勤務先などが含まれる顧客情報を通して、企業は一人一人の顧客について詳しく把握することができます。また、レジにPOSシステムを導入して商品の管理を行っている場合には、顧客情報とPOSデータ、ハウスカードの売り上げデータを照らし合わせ、どんな人がどこで何を購入したのか、事細かに分析することもできるのです。
こうして把握した顧客の好みや購買頻度は、販売促進のキャンペーンや商品の陳列・展示を効果的に行うことを可能にします。さらに、販売促進や囲い込みの具体的な施策として、より効率的にポイントプログラムを活用することもできるでしょう。
いかなる施策を行うにしろ、自社が顧客についてのデータを持つことは、より効果的・効率的に成果を出すことに繋がるのです。
2. ポイントサービスを柔軟に設定できる
ハウスカードに付帯するポイントなどのサービスは、自社の業種業態やターゲット層にあわせて、柔軟に設定できるため、より効率的かつ効果的に集客や顧客の囲い込みが行えます。
例えば、「ハウスカードでのお支払いでいつでもポイント2倍!」などのポイントサービスを目にしたことはありませんか?これも、ハウスカードを発行する会社が顧客を囲い込むために独自に設計しているポイントサービスの例でしょう。
ハウスカードと連携しながら、自社の事業と顧客にマッチしたポイントサービスの施策を行うことは、ポイントサービスのメリットを充分に活かしながら、自社にとって最大限の効果を得るための近道ともいえそうです。
3. 出費が減り、収入が増える可能性もある
クレジットカードの場合、企業側は加盟店手数料をクレジットカード会社に支払う必要がありますが、自社で独自に構築し運用するハウスカードは、そのランニングコストを抑えることができます。
クレジットカード会社と加盟店の間で交わされる手数料は、店の業種により異なりますが、
- 飲食店:5%程度
- 小売店:4%程度
- デパート:2%程度
- コンビニなど:1%程度
と言われています。(https://www.a-tm.co.jp/top/creditcard/creditcard-knowledge/creditcard-processing-fees/より)
また、顧客がローンを選択した場合に発生する利息も得られるため、収益の改善にもつながります。
4. マーケティング施策の成果を出すハードルが低い
ハウスカードにおいては、一般的なダイレクトメール発信の1%程度の反応があれば、上出来といわれています。ハウスカード関係なく、マーケティング施策を打つよりも、成果をだすハードルが低くなるというわけです。
上でも紹介したように、自社発行のハウスカードを通じて得られる顧客情報を駆使すれば、より大きな反応を期待することもでき、マーケティング施策の効果は得られやすいでしょう。
【まとめ】ハウスカードのメリット
このように、ハウスカードには自社で発行するクレジットカードだからこそ得られるメリットが多くあり、そのどれもが大手ブランドのクレジットカード会社との連携では実現できないものです。
そして、上述のようなハウスカードのメリットを充分に享受するには、従来のカードとの差別化を行うことが求められます。ハウスカードだから得られる設計上の自由度を活かしながら、自社の顧客を増やし、守り続ける施策に応用していきたいものです。
ハウスカード導入のデメリットとは
ここまではハウスカードのメリットについてご紹介してきましたが、当然デメリットも挙げられます。ハウスカードならではのメリットがあった分、ハウスカードならではのデメリットもありますので、詳しく解説していきます!
1. 新しい業務内容が増え、従業員に負担がかかる
ハウスカードの導入にともなって、
- カード作成の勧誘
- 作成手続きや申し込み受付
- 顧客情報の管理
- カード決済業務
といった業務が発生します。導入直後は従業員が十分に業務を理解できておらず、決済ミスが起きやすくなるなどの事態も考えられます。店舗でのオペレーションが円滑に行えるよう、導入前の準備として、事前にシステムプログラムの理解と操作技術の習得を行うことが必要です。
2. 予想よりカード会員を獲得できない可能性がある
自社の顧客から会員を集めなければならないハウスカードは、予想より会員登録が増えないという事態に陥る可能性もあります。
その理由として考えられるのは、
- 小規模な店舗で、商品の品揃えが豊富ではない
- ハウスカードは使用場面が限定的で利便性に欠ける
- 店舗・会社ごとにハウスカードを作って、沢山のカードを持つ状態を避けたい
といったものです。
いずれの理由に関しても、それらをカバーできるだけの「お得感」を提供できれば、顧客にとってハウスカードを持つメリットがデメリットを超え、会員を獲得できるはずです。発行企業には顧客意思を超えたお得感や魅力造りの工夫が求められるのです。
ハウスカード導入の注意事項とは
1. 綿密なプランニング
安易な計画のもと導入してしまうと、情報の管理に収拾が付かなくなってしまったり、逆に顧客とのコミュニケーションの足を引っ張る可能性もあります。顧客満足度を上げるために、ポイントカードを使ってどのような施策を行うのか、綿密なプランニングが必要です。
2. 自社の規模や顧客に合わせたシステムの構築を行う
ハウスカードの成功には、導入後の運用や店頭でのオペレーション、サービスのあり方が重要であるといわれています。顧客の潜在的願望を先取りしたり、指摘を課題にした運営に力点を置くように意識をすることが求められるでしょう。また、自社の規模に合うシステムを構築するために、ハウスカード導入後の成功・失敗事例を参考にしながら、検討を進めましょう。
3. 会計処理
発行企業にとっては負債であることから、流動負債または固定負債に含まれる形で貸借対照表に記載されます。
その場合のポイント発行の処理を下記の2つ1のどちらにするのか検討が必要です。
- 将来の値引きを約束するものと捉える場合
- 将来の景品を約束するものと捉える場合
ハウスカード発行の事例
ハウスカードの導入を検討されている方に向けて、ここからは具体的な事例をご紹介したいと思います。各社が業種業態にあわせた施策を盛り込んで、ハウスカードのサービス提供を行っています。
自社にはどのようなサービス提供が適しているのかを考える上で、参考にしていただけますと幸いです!
紀ノ国屋メンバーズカード(株式会社紀ノ國屋)
「紀ノ国屋メンバーズカード」は、紀ノ国屋でのお買い物がお得になるハウスカードです。
キャッシュレスでのお買い物でポイントが付与され、カードメンバー限定の特別販売企画も設けられています。お中元・お歳暮など会員だけの優待や、毎月一定期間内は付与ポイントが通常の5倍になるキャンペーンなどが提供されています。こうした施策は、毎日のルーティンになっている「いつものお買い物」に限らず、季節ごとに特別に必要となる商品も自社で買ってもらったり、まとめ買いをしたくなるように、工夫を凝らした結果といえます。
毎日の生活を支えるスーパーという業態だからこそ、顧客にとっての利便性向上につながる接点の拡大や、購買意欲の掻き立てを行っていることがわかります。
(紀ノ国屋メンバーズカード:https://www.super-kinokuniya.jp/f/members)
コスモ・ザ・カード・ハウス(コスモ石油マーケティング株式会社)
コスモ石油のハウスカード「コスモ・ザ・カード・ハウス」は、全国のコスモ関津サービスステーションで利用でき、会員価格で燃料油がお得になるカードです。
その他にもお得なサービスとして、給油やカーケアでマイルが貯まったり、ETC機能付カードを無料で発行できるなど、様々なサービスを展開しています。
さらに、会員登録のハードルを下げるため、初年度年会費 無料、新規入会時に燃料油500円相当のプレゼント、初回入会で50マイルを付与、などの施策を行っています。
また、コスモ石油は「コスモ・ザ・カード・ハウス」の他に、イオングループの店舗でのお買い物に利用でき、WAONPOINTが貯まる「コスモ・ザ・カード・オーパス」や、高速道路やその他加盟店等のショッピングで貯めたポイントから、ガソリン代やカーケア諸品の代金がキャッシュバックされる「コスモ・ザ・カード・トリプル」といった合計3種類のクレジットカードを提供しています。
一人一人の顧客が自分の利用シーンに合わせてカードを選択できるようにすることで、様々なニーズを持った消費者を囲い込めるようにしていると考えられます。
(コスモ・ザ・カード・ハウス:https://com.cosmo-oil.co.jp/card/house.html)
日産カード(株式会社日産フィナンシャルサービス)
日産のハウスカード「日産カード」は、全国日産販売会社や日産レンタカーにて割引が効いたり、日産ポイントが貯められるクレジットカードです。
その他にも、ロードアシスタンスサービスや、全国で提携している宿泊施設やアミューズメント施設において割引サービスや特典が設けられています。
上記でご紹介したハウスカードである「日産カード」の他に、Visa・Mastercardと提携している「日産カードVisa・Mastercard」や「NISMO CARD(レギュラー)」、「NISMO CARD “Club NISMO”」といった、様々に利用可能場所や特典の異なるクレジットカードを提供しています。
また、法人向けの日産カードも設けられており、ビジネスシーンにも活用できます。
(日産カード:https://www.nissan-fs.co.jp/card/)
東武カード(東武カードビジネス)
東武カードは、どちらもVisa、Mastercard、JCBが付帯された2種類のハウスカードを提供しています。
それぞれに細かな特典が異なりますが、どちらについても東武のハウスカードとして特徴的な点は、東武グループでの様々な利用シーンでTOBU POINTが付与されることです。
また、東武グループの施設や買い物の利用でもTOBU POINTが貯まります。貯まったポイントは1ポイント1円で使ったり、WEBサービスで商品と交換したり、東武鉄道チケットレスサービスにて利用できたり、単なる値引きに留まらず、多様なポイント利用方法が容易されています。
通勤通学に毎日使われる公共交通機関だからこそ、日々の生活に密着したポイントシステムをハウスカードと連携させていることがわかります!
(東部カード:https://www.tobu-card.co.jp/)
マジカルクラブTカードJCB(ニッセン・クレジットサービス株式会社)
ニッセンのハウスカードは、ニッセンでの買い物、JCB加盟店や公共料金の支払いにおいて使えるクレジットカードです。
JCBだけでなくTポイントとも連携しているため、JCB加盟店やTポイント提携先でこのカードを利用することで、Tポイントを貯められます。1ヶ月に3万円以上利用すればTポイントが2倍付与されるため、「マジカルクラブTカードJCB」を使えば使うほど、お得にお買い物ができる仕組みになっています。
国際クレジットカードブランドのJCBと連携することで、クレジットカードとしての利便性が高まります。さらに、自社ポイントではなく、共通ポイント大手のTポイントとも連携を行っているため、ポイントサービスとしての利便性も向上させているのです。
(マジカルクラブTカードJCB:https://www.nissen-ncs.jp/WEB/)
【ハウスカードの事例】まとめ
業種業態の異なる企業の、様々なハウスカードの事例をご紹介しました。それぞれが、自社の規模・事業・顧客に合わせたハウスカードを発行し、特典やポイントの付与方法にも工夫を凝らしていることが、ご理解いただけたのではないでしょうか。
顧客のニーズに応えながら、さらなる顧客との接点を創出したり、クレジットカードとしての利便性を高めることで会員数増加を図ったり、マーケティングの施策として多様な活用方法が考えられます。そして、その柔軟性こそがハウスカードの最大のメリットです。
自社にとっての最適なサービス構築を検討することは容易なことではないと思いますが、上記の事例が少しでもお役に立てばうれしいです!
まとめ〜【自社クレジット】ハウスカード導入のメリットとは?!~
最後までお読みいただきありがとうございます。「【自社クレジット】ハウスカード導入のメリットとは?!」はいかがでしたでしょうか。
ハウスカードは、独自性が高く、意外とメリットも大きいことがお分かりいただけましたか?
自社に適したマーケティング施策の一つとして、どのような運用ができそうか、本記事をきっかけに検討を深めていただけましたら幸いです!!
また、ポイントサービスとの親和性も非常に高い施策ですので、ぜひ当サイトの他の記事も併せて、参考にしていただければと思います。
こちらの記事では、自社開発のポイントサービス「ハウスポイント」についてご紹介しています!本記事と併せてご確認いただくと、さらにハウスカード・ハウスポイントの可能性をご理解いただけると思います!ぜひ下記のリンクより、ご覧ください!!
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