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【星野教授執筆/後編】おざなりな「データ分析」で施策や効果を語る落とし穴

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慶應義塾大学経済学部教授 星野崇宏

2004年東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了(学術・経済学)。その後名古屋大学大学院、シカゴ大学、ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院、東京大学等を経て2015年より現職。3年連続で慶應義塾大学経済学部のゼミで志願者が最も多いゼミを指導する。第13回日本学術振興会賞、2017年に日本統計学会研究業績賞を受賞。統計学・行動経済学・マーケティング分野の専門家で、国内トップレベルのデータサイエンティストとしても知られる。他にも、日本行動経済学会理事、日本行動計量学会理事、日本マーケティング・サイエンス学会理事等も務める。

こんにちは。CRM/ポイントサービスコンサルティングのエムズコミュニケイトが運営するポイントマーケティングラボ編集部です。

ポイントマーケティングラボでは、企業・事業会社のマーケティング・販売促進の担当者・事業責任者の方々に向けて、ポイント制度の導入や分析、CRMのノウハウについて、プロの視点から惜しみなく情報を発信して参ります。是非ご参考にしていただければ幸いです。

この記事は弊社顧問である慶應義塾大学星野崇宏教授に執筆頂いた記事の後編となります。是非ご一読ください。

前編がまだの方はこちらからご覧ください。また、星野教授についてのプロフィールはこちらからご覧ください。

ポイントサービスの配分:誰にどれくらい与えるべきなの?

月額1万までのお客様には0.5%だが、1万円以上のお客様には1%、2万円以上だと1.5%といったように購買金額で付与率を変えるようなポイントサービスが良く行われています。専門的には顧客階層プログラムと呼ばれるもので、上客のロイヤリティをさらに高めたい、というものです。

しかし、「上客により厚く配分する」ようなポイントは、本当に有効なのでしょうか?

これについては様々な研究から、ヘビーユーザーに厚く配分しすぎていて効率が悪く、よりライトユーザーに原資を配分したほうが良い場合が多い、ということが知られています。

例えば実際に自社でのみ購買・利用するユーザーに対して、さらにポイントを多めに出すことで、追加的な売上が上がるでしょうか?それは一般に期待できないでしょう。個人から得られる売上には一般に天井効果が存在するものです。

一方、そのサービスやカテゴリー自体は多く購買・利用しているが、メインが他社であるような顧客にとっては、プロモーションを与えるとより自社での購入を増やす可能性は十分あります。

上記の顧客階層プログラムはもちろん適切な設定を行うことで、顧客の購買や利用を増やすことは可能です。但しその場合にはよほど「どのような設定にするか」「どんなライトユーザーに購買・利用を増やしてもらうか」についてデータに基づいたシミュレーションを行う必要があります。実はそういったシミュレーションも、先ほど取り上げた顧客ごとの正確な生涯価値の計算によって実現します。

また、顧客階層プログラムといった大掛かりなものでなく、特定のタイミングでポイントのクーポン付与をする場合などでも、生涯価値やこれまでの顧客の反応パターンを正しくふまえた上で実行することで、その効率は高まると期待することができます。

ポイントサービスや顧客データなど、データ分析にまつわることで何かしらご興味がある方は、こちらからお問い合わせください

還元(交換)のタイミング:ちょこちょこ使いさせてもいいの?

ポイントをどのように付与するのか、一定の原資の中で誰に配分するか、といった話題とは別に、どのように顧客に使ってもらうのが購買や利用の促進につながるか、というのは企業にとって大きなテーマの一つだと思います。

よく「顧客の利便性を高めることが自社の売上にもつながる」という事が言われますが、少なくともポイントサービスについてはどうやらそうではない、ということはいろいろな研究から知られています。

例えば、支払い時の利便性を高める、という目的で、某共通ポイント企業は「支払いに端数がある時に(例えば1019円なら19円分の端額を)ポイントで払いますか?と声がけを積極的にせよ」という施策を実施したことがあります。これは一見、顧客のことを考えた良い施策のように思われますが、このような施策はポイントの効果(特に貯めさせる効果、次の購入時により金額が高くなる効果)などを著しく損ねるもののようです。実際、くだんの企業は最終的にこの声がけ施策をやめました。

1ポイント1円から使えるようなポイントサービスであっても、多くの消費者は実は少なくとも100円や500円、家電量販など場合によっては一万円などといった単位を超えて初めて使うことが多いことが調査や実際のポイントデータの分析から知られています。ちょこちょこ使いをさせてしまうと、顧客にとって大きな価値を感じるまでのポイント額には達しづらくなり、そのポイントサービス自体の魅力を失わせることになり得ます。

逆に、顧客の購買頻度や一回当たりの購買金額、付与率など様々な要因に影響されるので、データを分析する必要はありますが、ある程度貯まったらそれを顧客に提示し、顧客に利用を促すことで「知らないうちにこれだけ溜まっていたお得感」を感じさせ、購買や利用の増加につなげることが可能となる例もあります。

ポイントは使わせる方法やタイミングによってその効果も異なるようです。

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サイエンスとしてのポイントサービスとデータ分析の必要性

繰り返しになりますが、ポイントサービスについては過去膨大な研究知見があり、「なぜ現金値引きより効果的な場合があるのか」「原資が一定ならどのような顧客にどの程度の付与を行うのが効率的なのか」「ポイントのROIはどう計算すべきか」「どのような業態ではどのようなサービス設計がよいか」についてはある程度コンセンサスがあると言ってよいでしょう。

但し、実際にこれらを行うには個々の案件での顧客の行動理解が欠かせません。そのためにも、実際にデータの分析を行った上で設計や施策策定をすることが重要です。

我々の研究室はこれまでも多くの企業様と共同研究を実施し、そのうちのいくつかは学術研究として発表されておりますし、発表されていないものでも企業様のポイント施策に有効に活用いただいております。

マーケティングや経営分野でもポイントサービスは特にアートではなくサイエンスとして実務に生かせる知見が数多く分かっており、確実な打ち手と高いROIが確保されうる分野であると考えています。

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ABOUTこの記事をかいた人

2004年東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了(学術・経済学)。その後名古屋大学大学院、シカゴ大学、ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院、東京大学等を経て2015年より現職。3年連続で慶應義塾大学経済学部のゼミで志願者が最も多いゼミを指導する。第13回日本学術振興会賞、2017年に日本統計学会研究業績賞を受賞。統計学・行動経済学・マーケティング分野の専門家で、国内トップレベルのデータサイエンティストとしても知られる。他にも、日本行動経済学会理事、日本行動計量学会理事、日本マーケティング・サイエンス学会理事等も務める。