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エムズコミュニケイト設立20周年記念講演【おトクからエンゲージメントへ~あらたなポイントの潮流~】

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エムズコミュニケイト 佐藤 信二

CRM・ポイントサービスの導入・改善コンサルタントとして100案件以上のプロジェクトをマネジメント。担当業界は、小売り・流通、金融、電力・ガス、IT、通販、通信キャリアなど幅広く網羅。生活者を対象としたポイントサービス感度調査を業界で初めて実施。アンケートリサーチを強みとしたロジックに基づくコンサルティングを強みとしている。

株式会社エムズコミュニケイトは設立20周年を迎えました。
この度、代表岡田マーケティングの第一線で活躍する奥谷氏北海道大学名誉教授で地域通貨の研究の第一人者の西部氏を迎え、「新時代のポイントを語る」と題した記念講演会を開催いたしました。

第一部「おトクからエンゲージメントへ~あらたなポイントの潮流~」では、
従来「100円で1ポイント付与、1ポイント=1円で利用」という値引き販売の延長としてのポイントから、
企業と顧客のつながり(エンゲージメント)を促進・強化する手段としてその役割が進化してきている点について国内・国外の事例を交えて討論しました。

第二部「コミュニティ活動の中核となるこれからのポイント」では、
地域社会と参加者のつながりの強化やコミュニティの活性化を促す手段として、
地域通貨や地域ポイントが活用され、法定通貨とは異なる次元で価値を評価し、循環するモデルの紹介を行いました。

本記事では、エムズコミュニケイト20周年記念講演会の様子をダイジェストでお届けいたします。

 

奥谷 孝司(おくたに たかし)

顧客時間CEOオイシックス・ラ・大地専門役員

1997年良品計画入社。
2010年WEB事業部長に就き、「MUJI passport」をプロデュース。
2015年10月にオイシックス・ラ・大地に入社し、2017年にEngagement Commerce Labを設立。2018年に顧客時間共同CEOに就く。

著書に『世界最先端のマーケティング 顧客とつながる企業のチャネルシフト戦略』(共著、日経BP社)、『マーケティングの新しい基本 顧客と繋がる時代の4P×エンゲージメント』がある。

 

西部 忠(にしべ まこと)

北海道大学名誉教授、専修大学教授

進化経済学者。貨幣の多様化と進化の視点から地域通貨、暗号通貨、デジタル通貨を研究。同代表理事。
進化経済学会会長、貨幣革新・地域補完通貨学会(RAMICS)理事。

著書に『脱国家通貨の時代』、『貨幣という謎』、『地域通貨』(編著)、『地域通貨のコミュニティドック』(編著、進化経済学賞受賞)、『進化経済学基礎』(編著)他多数。

 

 

岡田 祐子(おかだ ゆうこ)

株式会社エムズコミュニケイト 代表取締役社長

慶應義塾大学卒業後、大日本印刷入社。2003年に国内唯一のポイントサービスの専門コンサルティング会社エムズコミュニケイトを設立。
大手企業のポイントサービスやCRM・顧客戦略に関するコンサルティング支援の他、セミナーや講演、執筆活動を行う。

著書に『成功するポイントサービス』(WAVE出版、2010年)。
現在、(一社)日本リテンション・マーケティング協会理事。総務省マイナポイントの検討委員他。

 

第一部 「おトクからエンゲージメントへ~あらたなポイントの潮流~」

➀ 行動経済学からみるポイントの「力」

〈岡田〉「ポイントサービスが持つ値引きやサービスとは異なる固有の「力」として、少しずつコツコツ貯めることにより、「へそくりのような密かな楽しみ」としての+αの精神的な価値が生まれる点がある。
ランク制を設け、あと少しで次のランクにアップするという「プレッシャー」を与えることで、来店間隔や来店頻度が高まる効果も期待できる。購買やアクションの頻度が高まることで、エンゲージメントへとつながっていく」

これらは行動経済学においても実証されている。

➁ エンゲージメントの重要性

〈奥谷〉「企業活動を通じて「お客様がつながり続ける価値=エンゲージメント・バリュー」をどうやって作っていくかを考える。
企業が提供する体験をお客様が支持し、いいなと思って使い続けることで、エンゲージメント・バリューが生まれていく。ポイントをその潤滑油として機能させつつ、つながり続ける価値をどう作っていくかを考えている」

〈西部〉「地域通貨の研究者の観点からいえば、コミュニティの価値を高める、つまり「助け合い」や「愛着」という経済的な価値+αの価値を高めることを目的のひとつにしていた。そのような考え方がポイントのシステムの中に入ってきたと言える」

③ おトクからエンゲージメントへ

〈岡田〉「100円で1ポイント付与」「1ポイント=1円で利用」という共通ポイントが浸透させてきたポイントの経済概念が変化してきている。
企業は商品やサービスで差別化できればよいがなかなか難しい。よって、商品やサービスを購入する/使い続ける顧客に対して企業が提供する「ロイヤルティプログラム」でもって差別化する時代になってきている」

〈奥谷〉「ポイントプログラムは値引き販売の一貫として生まれたのかもしれないが、お客様が企業に求める価値が変化してきている。
お客様が求めている社会的な価値をCX(カスタマーエクスペリエンス、顧客体験価値)として提供するという視座で考えるとよい」

④ アクションポイントとエンゲージメント

〈岡田〉「人々はポイントにどのような価値を求めているかを独自に調査してきた中で、ポイントの満足度への寄与度として「ポイントの貯まりやすさ」「付与機会の多さ」「購入以外でのポイント付与機会が豊富」といった項目が「還元率の高さ」より上位となっている。
これはつまり「おトク」よりも「おトク感」に重きが置かれていることをあらわしており、生活者の視点からすれば、企業は還元率競争をするのではなく、自社の特性を踏まえたポイントサービスを設計することが重要ということを示唆している」

アクションポイントの事例紹介

「タイムズ24」事例(カーシェア事業)

限られた車の台数をいかに効率よく運用するという観点から、「企業にとって望ましい行動」に対してポイントを付与している。
逆にやって欲しくないことをやってしまったお客様からはポイントを減算している。ただし、簡単な検定を行うとマイナスがゼロになる。この施策を実施した結果、貸し出した車が時間通りに返却されたり、満タンに給油してから返却されたりするようになり、利益につながっていった。

「Snaq-me」事例(おやつの月額定額利用サービス)

https://snaq.me/news/donguri_program/

お客様が求めているものが多様化している中で、ティータイムを楽しんでもらうおやつを届けるスタートアップが伸びている。商品を注文するのではなく、好みを伝えると企業がセレクトした商品がサプライズで届く。
「お菓子(商品)」を売っているのではなく「おやつ(体験)」を売っているというコンセプト。お客様は届いた商品と出会う楽しみがある。この企業が提供する「どんぐりプログラム」では、貯めたポイントを「値引き」の他に「優先リクエスト」や「サプライズボックス」にポイントが使える。

「YAMAP」事例(オフラインの山中でも現在地を確認できるNo.1登山アプリ)

DOMOの細かな仕様と具体的なご利用方法について

安心安全な登山をするためには欠かせないアプリになっている。
山登りを楽しみたい人たちのコミュニティが自然に発生している。登山グッズのECや登山保険なども展開しているほか、有料会員になると登山地図がたくさんダウンロードできるなどのサービスを提供している。サービスの利用で貯めるDOMOポイントは、買い物にも使えるが多くの人が山の保全にポイントを使う。
その方が気持ちがよいと感じる人が増えています。ポイントが社会的価値へと転換しながらエンゲージメントの向上につながっている。

DOMOの特徴

https://info.yamap.com/archives/3089より引用

 

第二部 「コミュニティ活動の中核となるこれからのポイント」

⑤ コミュニティのエンゲージメントを強化するポイント

〈西部〉「近年、自治体の地域通貨や地域ポイントが何百と生まれている。
今回はその中で地域通貨と行政ポイントが連携し、コミュニティの活性化や住民の健康増進に寄与している事例を紹介したい」

自治体でのポイントサービス事例

「君津信用組合アクアコイン・木更津市らづポイント」事例

本事例は、信用金庫・行政・商工会議所の三者連携協定によって運営。
アクアコインは給与支払いや地方税の支払い、お寺のお賽銭などにも使える。並行して「らづポイント(行政ポイント)」を運用し、コミュニティ活動や健康活動へ助成を行っている。子ども食堂など公益的なプロジェクトへのコインやポイントの寄付、
物価高騰対策支援事業して20%ポイント還元など行政と一体となってポイントが活用されている。

「三鷹市みたか地域ポイント」事例

ボランティア、まちづくり、健康増進を支援する行政ポイントとしてスタート。
「地域のつながりコース」、「みりょくコース」他、10か所のチェックポイント巡りのスタンプラリーなど実施。街のにぎわいを活性化することに寄与している。

⑥ 社会課題を解決する仮説「推し活ポイント」

〈岡田〉「かねてよりポイントは人間が何か行動を起こす上でのエンジンになると考えており、そのポイントの力を社会課題の解決に結びつけられないかと考えていた。たとえば、応援したい、貢献したい、役立ちたいという「推し活」に対してアクションポイントを付与。「推し活」の対象者や賛同者のご厚意(各種値引きや権利など)にポイントを交換する。共同体への貢献に対し、他の参加者のご厚意によるサービスの提供を受けるといった「推し活ポイント」の仕組みを構想している」

「LETS理論」の考え方と応用事例

〈西部〉「それはまさしくLETS理論の互酬の考え方ですね。個人間の貸借ではなく、コミュニティへの貸借と考える。
つまり、売り(+)買い(-)を台帳に記録するためミクロ(個人の台帳)には正負が存在するが、マクロ(台帳全体)ではゼロサムとなるモデルです。お金は存在せず、価値の評価や交換を法定通貨「円」とは異なる次元で行う。
データ分析をすることで「コミュニティの健全性や活性度」「つながりの強さ」を計測できるようになる」

 

また、会場からはポイントサービスを運用するためのコストをどのように考えたらよいかという質問が出た。
奥谷氏は発行額やシステム運用費だけでなく、顧客に対するプロモーション費用、広告費用など関係性構築にかかっているコストをトータルで考えていくとよい。
DX化することで効率的になり、より少ないコストで顧客との強固な関係性を構築することができるようになる点に注目すべきである」と答え、会場の参加者から賛同を得た。

エムズコミュニケイト設立20周年記念講演会の様子

 

いかがだったでしょうか。

エムズコミュニケイトは国内唯一のポイントサービス支援会社として、今後共、ポイントサービスの在り方を探求すると共に、みなさまのお役に立つように、このような発信をしていく所存です。

 

 

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