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エムズコミュニケイト岡田 祐子
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こんにちは。CRM/ポイントサービスコンサルティングのエムズコミュニケイト(2018年4月に大日本印刷グループよりMBOいたしました)が運営するポイントマーケティングラボ所長の岡田祐子です。
こちらのサイト、ポイントマーケティングラボでは、企業・事業会社のマーケティング・販売促進の担当者・事業責任者の方々に向けて、ポイント制度の導入やCRMのノウハウについて、プロの視点から惜しみなく情報を発信して参ります。
さて、本記事の先頭に表示されている画像は、「Tポイント」を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(以下CCC)から弊社が受領したDMです。「Yahoo!JAPANカード」をお持ちの方の中には、同様のものを受け取られた方もいらっしゃるのではないでしょうか。このDMは、ヤフーのTポイント離脱に伴いクレジットカード「Yahoo!JAPANカード」での買い物に際するTポイントの付与がなくなることを受け、送付されているものです。
昨今、各社のTポイント離れが話題になっています。本記事ではTポイントの加盟店減少の現状と詳しい事例、今後の共通ポイント市場の見通しについて取り上げていきます!
〈この記事は以下のような疑問にお答えします!〉
- 各社がTポイントを終了しているのは、なぜ?
- Tポイントが衰退していると言われているのは本当のこと?
- Tポイントは今後どうなっていくの?
- Vポイントって?
Tポイントの現状
CCCが運営するレンタルショップ「TSUTAYA」の会員カードとして1983年にスタートし、20年後の2003年に共通ポイントとなった「Tポイント」。しかし、2018年から徐々に加盟企業の離脱が見られ、2021年12月にはソフトバンクおよびヤフーが2023年度一杯でTポイントサービスを終了すると発表しました。「Yahoo!JAPAN ID」として双方のポイントシステムと共通IDを統合し、密接な結びつきを続けてきたヤフー(Zホールディングス)の離脱は、Tポイントにとって大きな打撃になるといわれています。
Tポイントを運営するCCCの発表によると、2021年3月末時点での提携企業数は5,703社、店舗数は165,808店舗となっています。
Tポイント離脱事例
ヤフー [サービス終了]
終了時期:2022年3月31日
各種サービスの利用で付与しているTポイントを2022年4月1日からPayPayボーナスに置き換えるとしています。対象となるサービスは、「ヤフオク!」「Yahoo!ショッピング」「Yahoo!トラベル」「一休.com」「Yahoo!ニュース」「ebookjapan」などの計14サービスに渡ります。
「Yahoo!JAPANカード」でもTポイントサービスは終了し、「Yahoo!JAPANカード」で貯めたTポイントを引き続き利用するには手続きが必要となります。手続きを行うことで、Yahoo!JAPAN以外のTポイント提携先で利用可能ですが、手続きを行わなければ22年4月1日にポイントは失効してしまいます。なおYahoo!JAPANカードはすべて「PayPayカード」に切り替えとなり、ポイントの付与はPayPayボーナスとなります。
このようにYahoo!の大半のサービスにおいてTポイントの付与と利用を終了する一方、懸賞サービス「Yahoo!ズバトク」と募金サービス「Yahoo!ネット募金」に限り、Tポイントの付与・利用への対応を継続する方針です。
理由・背景:
通販サイトに関しては、2019年3月時点で少なくともTポイントからの脱退の表明を行っていました。その理由は「O2Oの取り組みやリアルとネットを融合したポイント施策が促進されたなど、一定の成果が出たため」とされているほか、「ポイント制度が統一されることでユーザーがより分かりやすくなる」との説明がなされています。
備考:
Tポイント・ジャパンの親会社であるCCCとヤフーの情報連携は継続されます。同意を得たユーザーに対し、広告配信などマーケティングへの活用を続ける見通しです。
参考:https://points.yahoo.co.jp/info/other/20211201/
ソフトバンク [サービス終了]
終了時期:2022年3月31日
各種サービスにおけるTポイントサービスが終了すると同時に、毎月の通話・通信料の支払などで貯まる「ソフトバンクポイント」が22年4月1日から提供が開始される予定です。Tポイントからソフトバンクポイントへの交換にも対応がなされ、交換期間は22年4月1日から23年3月31日までとなっています。
新しく始まるソフトバンクポイントは、PayPayボーナスへの交換やソフトバンクのサービスなどで利用できるものとなっています。
ソフトバンクカード利用時の特典も22年4月1日から、Tポイントからソフトバンクポイントに変更されます。
ソフトバンクとソフトバンクの子会社であるSBパワーが提供する「くらしでんき」、「ソフトバンクでんきPowered by TEPCO」、および「旧おうち割 北陸電力 電気セット」におけるTポイントの提供も終了する予定です。
理由・背景:
ソフトバンク傘下のヤフー(現Zホールディングス)とCCCは2012年6月に戦略的資本・業務提携を発表し、それまでヤフーが発行していた「Yahoo!ポイント」を共通ポイントのTポイントに、またCCCの共通IDだった「T-ID」を「Yahoo! JAPAN ID」に一本化し、ポイントとID統合を進めてきました。これによりヤフーの各種サービスがTポイントと連動するようになり、またTポイント加盟各社の共通IDがヤフー側のIDに統一されるなど、2社は非常に密接に結びついてきました。
しかし2021年12月、Zホールディングスは従来まで発行していた「ヤフーカード」を「PayPayカード」へと移行すると発表し、合わせて従来まで「Yahoo! Japan」で利用できたTポイントを2022年3月一杯で終了することになりました。これに伴い、CCCにおいても従来までモバイルTカード発行に必要だった「Yahoo! JAPAN ID」が不要となり、両社の提携発表から約10年で2社の密接な提携関係に終止符が打たれます。
参考:https://cdn.softbank.jp/mobile/set/common/pdf/point/t-point-end.pdf
ファミリーマート [カード発行終了]
終了時期:2019年5月31日
店舗での買い物でTポイントを貯められる「ファミマTカード(ポイントカード)」の店頭発行を終了しました。11月以降は「dポイント」、「楽天スーパーポイント」も導入を開始し、「ファミマTカード」(クレジットカード)の発行は継続するものの、Tポイントがポイント付与における唯一の選択肢ではなくなりました。
理由・背景:
ファミリーマートが2019年7月から開始した「ファミペイ」の導入が要因で、FamiポートでのTポイント情報登録も終了となりました。「ファミペイ」はアプリとポイントカードを連携させ、ポイント利用から決済までを1つのバーコード提示で完了できるサービスです。手持ちのTカードは引き続きファミリーマート店舗で利用可能です。
ファミリーマートの親会社である伊藤忠商事の意向をくむ形で「ファミペイ」の導入を模索し、Tポイントと距離を置きつつあるとされています。
すかいらーく [マルチポイント化]
終了時期:「dポイント」「楽天ポイント」それぞれ2020年4月1日、2021年3月22日以降順次
Tポイントに加え、各ブランドにおいて「dポイント」と「楽天ポイント」の利用を開始しています。
参考:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39840940Q9A110C1000000/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000071.000057042.html
ドトールコーヒー [サービス終了]
終了時期:2019年4月19日
ドトールコーヒーショップ、エクセルシオールカフェ、カフェ・レクセル、ル・カフェ ドトールにおけるTポイントサービスを終了しました。
理由・背景:
理由については、「詳細は差し控えるが、両者で合意の上でサービス終了に至った」としています。ドトールコーヒーが独自に運営している会員サービス「ドトールバリューカード」のポイント付与は引き続き継続されています。
参考:https://tsite.jp/cp/index.pl?xpg=PCIC0102&cp_id=18583
三越伊勢丹 [サービス終了]
終了時期:2018年3月末
グループ百貨店やスーパーマーケット店舗での「Tポイント」の付与・利用を終了しました。
理由・背景:
同グループが提供する「エムアイカード」と「エムアイポイント」の利便性を高め、カード事業の拡大や顧客満足度の向上につなげたいとの背景があるようです。
備考:
2015年10月にCCCとの包括提携に基本合意し、16年5月から三越、伊勢丹などにTポイントを導入していました。16年4月にはCCCと合弁会社「三越伊勢丹Tマーケティング」を設立したが、提携契約を終了しました。
参考:https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1708/10/news129.html
Tポイント相次ぐ離脱の理由
相次ぐ脱退の理由は「加入するメリットの薄さ」といわれています。
加盟店はTポイントを利用したり、Tカードを発行したりするに際し、システム利用料やポイント原資を支払わなければなりません。しかし、こうした支払額に対するメリットが少ないとなると、Tポイントを利用するメリットは当然ながら少なくなってしまいます。
さらに、そもそもTポイントの利点にはTカードユーザーの行動データを入手しマーケティング活動に活かせることが挙げられますが、データマーケティングに必要な行動データや分析ツールの利用には「追加料金」の支払いが必要となる仕組みになっています。
結果的に、費用対効果が高くないと判断され、Tポイントから独自のポイントプログラムや他の共通ポイントへの乗り換え、共通ポイントのマルチ方式の開始等が発生しているのです。
今後の市場の動き
Tポイントからの企業の離脱が相次ぐことにより、ユーザー(一般生活者)にとってもTポイントを利用するメリットが減少していくことが予想されます。企業の離脱がユーザーの離脱を呼ぶという負の連鎖が生まれることは、Tポイントにとって非常に大きな脅威であることは間違いありません。
ですが、TポイントはVポイントと統合し新しく生まれ変わると発表されています。
統合により誕生する『Vポイント』は貯まる、使える幅が広がることがTポイントからの大きな変化であり、現在の離脱原因である「加入するメリットの薄さ」を払拭していこうとしています。
新たなポイントサービスとして生まれ変わるTポイントの様子には今後も注目していきたいものです。
以下の記事では、本記事の内容のアップデートとして、TポイントとVポイントの統合に関して詳しく解説しています!
ポイントサービス『Vポイント』や共通ポイント市場について、さらに理解を深めていただけるかと思いますので、本記事と併せてぜひご覧ください!!
本記事の冒頭で触れたCCCからのDMも、「Yahoo!JAPANカード」兼Tポイントのユーザーが、Yahoo!の離脱とともにTポイントから離れることを阻止するべく打たれたものです。「Tカード プラス PREMIUM」への入会によってクレジット決済とTポイント獲得を引き続き同時に行えることを強調しています。日常的に保有ポイント数等について通知をメールで行っているTポイントが、あえてこの真っ赤なDMを郵送で送っていることにも、CCCの切実さが感じられるのではないでしょうか。
↑弊社受領DM
また、ヤフーという大手ネットショッピングサービスの脱退は、O2O(Online to Offline)での顧客獲得を狙う企業にとって、Tポイントの魅力が大幅に削がれる要因ともなり得ます。
近年ではポイントプログラムやハウスマネーを導入するための安価なソリューションが多く存在しているため、ポイントシステムの導入に際するハードルは下がってきています。顧客開拓やO2Oを狙う企業は、独自のポイントプログラムを構築する、もしくは他の共通ポイントへの乗り換え、Tポイントと他の共通ポイントとのマルチ方式を展開する等、今後さらに新たなポイントプログラム戦略が現れ始めると考えられます。
参考:https://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/20190322-OYT8T50001/3/
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国内で唯一のポイントサービスに特化したマーケティングコンサル会社です。これまでのポイントサービスの導入・改善支援は300社以上あり、通販、小売り、サービス、金融、鉄道・航空、ガス電力など幅広い業界において実績があります。
※ポイントサービス導入改善に関する国内初の指南書を出版
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ポイントサービスの運用に必要な法的(景品表示法)、会計面(2021年から上場企業に強制適用されるポイント会計)において十全なノウハウを保有しサポートします。
※ポイント会計についてはEY新日本監査法人への執筆協力で『ポイント制度のしくみと会計・税務』(中央経済社)を出版。
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